Microsoft 365 と Google Workspace の昔話

Microsoft 365

Microsoft 365 (旧称Office 365)が2011年6月28日に世の中に登場してから、SaaS型のグループウェアの利用が急激に増えました。

Microsoft 365の発売は2011年ですので12年近く経過しています。生まれたばかりの子供が中学生になろうとしているような古い話であり「なんで導入したのかも理解できない」なども聞こえてくるので少し昔話をしていきます。

ローンチ(新しいサービスを開始すること)されたときに大手3社が導入を決めていたというのを後に関係者に聞いたことがあるのですが(1社うろ覚え)、そのうち1社で導入を経験した人間が書いている記事です。そのため黎明期からずっとユーザーとして使っていますし、一時期は中小企業向けにセールスなんかもしていた人間ですので、かなり偏った文章になるのはご容赦ください。
※自己紹介見ていただくと書いた人の遍歴が少し透けて見えると思います。

ISVにいると、M365の昔はまったく知らないって人も入社するのでエンジニア職にはこのような話をしています。
※Office 365の前のBPOS時代から、今の所属会社はサードパーティとして製品出していたというのを8月1日のオンボーディングの時の雑談で知りましたw

2011年ってどんな時代?

すでに学生や社会人だった皆さんは下記のようなものを見ると1つぐらいはひっかかるかなと思って記載してみます。

・ジャスコとサティが、一部店舗を除き、イオンの名称に統一される
・ニンテンドー3DS/Wii Uが発売
・流行語大賞「なでしこジャパン」
・ドラマ「家政婦のミタ」「マルモのおきて」「相棒 season10」
・アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「STEINS;GATE」「THE IDOLM@STER」「Fate/Zero」
・特撮「海賊戦隊ゴーカイジャー」「仮面ライダーフォーゼ」
・キングオブコント:ロバート

IT目線で見ると下記でなんとなくイメージができるかなと思います。
・Windows 7が2009年リリースなので導入がある程度すすんでいる(Windows 8は2012年)
・iPhone 4の全盛期(iPhone 4Sが2011年10月発売)
・WindowsServer 2003が現役(サポート収量が2015年)/2008R2が2009年にリリースされたので順次リプレースしているようなオンプレがまだまだ全盛期(2010年1月にAzureがリリースされているがWindows Azureという名称の通りで今のようなカバレッジ範囲ではない時代)

iPhone 4の全盛期と書きましたが、スマートフォンシェアが21.1%なので5人に1人程度の時代です。
参考:https://k-tai.watch.impress.co.jp/img/ktw/docs/1402/854/html/01_o.png.html

日本のクラウドを語る上で大きな起点になった出来事

みなさん名前を聞くと思い出すその出来事は「東日本大震災」となります。

—震災の記述を避けたい方は各サービスの経緯までSKIPください—

当時はIP電話が普及していなかっため(LINEなどはない)、既存の電話網で電話するために回線がパンクしましたし、ASP(Application Service Provider)サービスでメールを使っているケースもありましたが、自社のサーバー室運用のためにメールシステムも動かないのでコミュニケーションが取れない会社なども数多くありました。

コミュニケーションツールだけに限らず、被災した取引先ではサーバーが水没でデータもすべて復旧できないためしばらく業務ができないなんてこともありました。当時はオンプレミスで閉じた世界(いわゆるイントラ)にデータがあれば安全という考え方が多い時代でしたので災害時後の事業継続計画(Business Continuity Plan)も今のような視点ではなくオンプレ前提の考え方が多かったように思います。※2001年のアメリカの同時多発テロ以降にBCPが広がり始めたが、制定されていない会社も多かったものと推測します

経営陣は何を考えたのかというと法務的な見解や情報漏洩などで二の足を踏んでいた「クラウド」なるものを思い出して導入するきっかけになり、事例化などされることによりクラウド利用のシェアが増えてきたという流れができました。(実際にMicrosoft 365の問い合わせは「東日本大震災」により劇的に増えたとのこと)

このタイミングでGoogle Workspaceはどういう状況だったのかという所を整理するために各サービスの簡単な経緯をまとめたいと思います。

各サービスの経緯

Google Workspace

2006年8月28日 Google Apps for Your Domainの提供を開始
2016年9月30日 Google Apps for Business を G Suite にリブランディング
2020年10月6日 G Suite を Google Workspace にリブランディング

詳しくないのですが、下記が切っ掛けとなり日本のG Suiteの展開が盛り上がったのかなと思ってます。

「2014年12月4日、Googleは、G Suite for Business and Educationスイートの製品およびプラットフォーム全体を対象として、パートナーによる販売、サービス提供、革新を促進するためのGoogle for Work and Education Partner Programを発表した」

Microsoft 365

2011年6月28日 Office 365 for Businessの提供を開始
2020年4月22日 Microsoft 365 に名称変更

(その他)2017年3月14日 Microsoft Teamsの提供を開始

なぜ、グループウェアは導入されやすかったのか?

いまのゼロトラストネットワークの考え方ではなく、従来の社内ネットワークは安全だという考えが主流でした。IT用語としては一般的になったSaaSという言葉もこの頃はまだASPと混在して使われているような時代で「ASPと何が違うの?」なんて人も多かった時代だと思います。
※ASPはアプリケーションサービスプロバイダの略でありSaaSとほとんど同じ。広義的にはソフトウェア提供形態やビジネスモデルを指すことがある。

2007年後半に日本でクラウドコンピューティング上で提供されるSaaSの定義が各プロバイダより発信され始め、リーマンショック後コスト削減サービスとして急速な普及が始まった。各ASP事業者(ベンダー)は2009年頃から、アプリケーションレイヤー上の提供名称を、ASPからSaaSへと変え始めた。

https://ja.wikipedia.org/wiki/SaaS

Windowsであれば2003Servや2008/2008 R2Servの頃で、まだ仮想化環境にAD立てるとトラブルになるような時代でしたが、このころはまだCPUやHDDなどの価格も高かったですし、当然ながらIaaSみたいな考え方も一般的ではなかったのでサーバー立てるのも大変な時代でした。

メールに注目してもセキュリティ対応でテキストメールで送れという時期でしたし、大きな容量のファイルは送るなという時代です。そのため1人あたりのメールボックス容量がとても小さく、1GBなんて夢の世界だったという企業も多かったと思います。(下手すれば100MB以下、、、げふんげふん)

ある程度人数がいればExchangeなりPostfixなりで自社運用などをする方向が多かった時代でしたが、ひとり情シスであったり規模が小さい会社はメールサーバーの運用保守などができないor費用対コストが合わないなどでASPという形でメールを運用していたという会社が非常に多くありました。

Exchangeで運用していた会社にとっては容量が増えて運用保守料金も安くなるというASPやSaaSのメリットは間違いなくあるので、保守切れのタイミングでMicrosoft 365やGoogle Workspaceを考えるという企業が多かったように思います(Office 365 前身のBPOSは2009年4月から提供していましたがお値段が、、、げふんげふん)

また、Office製品の更新(Office 2013/2016)ぐらいを期に、メールとOfficeの全体的なコストを考えてMicrosoft 365に切り替えるという顧客も非常に多かったです。
※一方でブラウザだけで十分だしほかの製品との連携を考えたいということで G Suiteを入れる顧客も多かった。当時の中国との関係悪化でグレート・ファイアウォールの問題がでて、Microsoft 365に移行をしたいというニーズがではじまったのもこの頃です。(移行する前に大損害出して会社潰れちゃったなんてケースも遭遇したなぁ、、、)

メールだけでもメリットはありましたが、Skype for Business (いまでいうTeams)やSharePoint Onlineが入っているパッケージがあったため、以前の各製品ごとのコスト(運用コスト含め)とこれからのビジネスの発展を考えてサーバーという枠にとらわれたくないというニーズとビジネスチャットを使ってみたいというニーズとBCPという観点からSaaSを選択するという会社が多かったように記憶しています。また、Office製品の費用を考える場合はE3を買うという企業も非常に増えたのが2011年以降の流れとなります。
※Proplusという名称だったMicrosoft 365 Apps for businessのOffice 2013/2016問題とか懐かしいと感じる人も結構多いのでは?

ライセンスの変化による流れ(大きなトピックのみ記載)

Azure AD Premium P1(Microsoft Entra ID P1)

※画面の表示の切替が23年10月1日予定なのであえて旧名称で書いています。

Azure AD Premiumは2014年4月のGAなのですが、この頃はアプリケーションアクセス管理やセルフサービス・パスワードリセットや多要素認証という部分がメインだったため、Forefront Identity Manager(FIM)を使っている会社や要件がマッチする大きな企業など一部だけの導入のイメージがありました。

一番大きな出来事は「条件付きアクセス」かと思っています。
(実際の日付がネットから探し出せなかった)

従来のAzure Active Directory Premium(Azure AD Premium)ライセンスは、2016年9月から「Azure AD Premium P1」ライセンスに名称が変わりました。また、新たに「Azure AD Premium P2」ライセンスが追加され、Azure ADのセキュリティを強化する2つの新サービスはこのAzure AD Premium P2で提供されます。

https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/1610/11/news023.html

米マイクロソフトは2016年10月4日(米国時間)、「Azure Active Directory(以下、Azure AD)」にデバイス単位の条件付きアクセス制御機能を追加した。

https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/1610/06/news076.html

新しい条件付きアクセスの管理機能も、本日から一般提供されます。Azure での条件付きアクセスにより、Azure Active Directory と Intune の両方について、統合された 1 つのコンソールから充実した機能を利用できます。

https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/blog/2017/06/08/the-new-intune-and-conditional-access-admin-consoles-are-ga/

セキュリティを気にする顧客の場合はADFS+ADFS Proxy(WAP)が必要となり、サーバー複数台数が必要になるためコストが高くなるという問題を「条件付きアクセス」でクリアすることができるようになったために、Microsoft 365を導入してしばらく経過したユーザー企業の次の対策としてAzure AD Premium P1を導入するという流れができました。※証明書など細部まで考慮するとADFSは最近ようやく不要となるシナリオになった。

先述したセルフサービス・パスワードリセットなどやログの観点やグループベースのライセンス割り当てなどがきっかけとなり導入するケースもありますが、条件付きアクセスでセキュリティをしっかりするというシナリオが一番ユーザー企業に響いたのではないかなと思っています。

Intune

こちらもいまとなってはMDM製品としては有名になりましたが、MAM(Mobile Application Management)管理として細かくOffice製品などを管理したい場合は他のソリューションより優れている(自社製品の管理だから当たり前の話)と評価をされるため利用者が増えました。
※具体的にはファイルを開いたら画面キャプチャーとれないとか、コピーをしてSMSやLineなどに貼り付けができないなどを行うことが多い

(翻訳後)Microsoft Intune は、もともと 2010 年 4 月に Windows Intune として導入されました。Microsoft は、このサービスを他のプラットフォームに拡張し、2014 年 10 月 8 日に Microsoft Intune に名前を変更する計画を発表しました。

https://en.wikipedia.org/wiki/Microsoft_Intune

すでにMicrosoft 365を使っていた会社は契約更新の際にAzure AD Premium P1やIntuneの導入をUpsellで紹介されることが増えて、単体で追加購入するかいずれも利用する場合はコストメリットが高いEMS E3を購入するというシナリオが増えました。新規導入の場合もOffice 365 E1/E3/E3だけではなくEMSをセットで購入するように変わりました。

並行してGoogle Workspaceを使っている会社もIntuneを使いたいというニーズから結果的にAzure テナントが存在するというシナリオが増えて、IdPをどうするのかという課題が膨らんだという話も聞くようになりました。

Microsoft 365 E3/E5

2017年11月にMicrosoft 365がGAされました。
※SaaSのブランド名がOffice 365の時にMicrosoft 365がGAされている

Office 365 + EMS + Windows 10 Enterpriseというセットのため、Windows 10 Enterprise って何が違うんだっけ?という疑問が多く出たのですが、セキュリティ方向にMicrosoft 365が発展するにつれて機能を使うにはEnterpriseが必須となるシナリオも多くなったためにOffice 365 + EMS の企業やOffice 365単体で購入していた企業がMicrosoft 365にするというシナリオが増えました。

お詫び

大企業向けではなく一般法人向け(Business)の話を書けと言われそうですが、7年近く大企業向けの仕事しかしていないので書けません、、、すみません。Businessになる前のMライセンスの頃とかの話は書こうと思えば書けるのですが面白くないので割愛しています。
ついでにE2とかE4の話書こうと思いましたが詳細の資料探すのが面倒であきらめました。

まとめ

Microsoft 365に偏った記載になってしまいましたが、なぜMicrosoft 365を導入したのかという部分や世の中でどのようなライセンス遷移があったかという「さわり」の部分は理解いただけたのかなと思います。また、Googleを利用している場合になぜMicrosoft の製品を使っているのかというシナリオも少しイメージしていただけのかなと考えています。

Microsoft 365関連の仕事を初めて行う場合に、いまあるライセンスなど目先のことを覚えるだけでは顧客の感情や経緯を理解できないことがあるかと思います。サマリーでよいので過去の経緯を理解しておくと顧客はこういう考えなのかなとか仮説が出てきますので、そういうものの手助けになれば幸いです。

※リリース日のミスなどありましたら個別にお知らせいただけますと助かります。

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